
令和4年に障がい者総合支援法が改正され、障がい者本人の希望や就労能力・適性に合った就労先や働き方を選択できるよう支援する「就労選択支援」が創設されました。この新たなサービスは、就労アセスメントの手法を活用し、個々の強みや課題を整理しながら適切な就労機会を提供することを目的としており、施行は令和7年10月を予定しています。
令和7年10月より、就労継続支援B型の対象者は次のとおり変更されます。
「就労選択支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行われている者」
このため、新たに就労継続支援B型を利用する意向がある場合、事前に就労選択支援を利用する必要があります。
ただし、以下の者については、アセスメントなしで就労継続支援B型を利用できます。
以下の状況では、就労移行支援事業所等によるアセスメントを経ることで、就労継続支援B型の利用が認められます。
障がい者本人の希望に応じ、以下の者は就労選択支援を利用することが可能です。
就労選択支援事業者の実施主体は、以下の条件を満たす事業者と定められています。
一部の地域では、「過去3年以内に3人以上の利用者が新たに通常の事業所に雇用された事業者」(要件①)を満たす事業者が存在しない場合があります。そのため、都道府県知事が認めるその他の同等の就労支援の経験・実績を有する事業者(要件②)も、実施主体として認められます。
要件②の該当例として、以下のような事業者が想定されています。
同一市区町村内に就労選択支援事業所が存在しない場合、例えば以下の条件を満たす事業者も対象となることが考えられます。
従業者(就労選択支援員)
常勤換算で利用者÷15以上
管理者
原則として、管理業務に従事するもの(管理業務に支障がない場合は他の職務の兼務可)
就労選択支援員の兼務について
一体的に運営される就労移行支援事業所等の常勤の職業指導員等について、直接処遇に係る職員は、利用者へのサービス提供に支障がない場合に限り、就労選択支援員として従事することが可能です。また、兼務する勤務時間は、就労選択支援員に係る常勤換算上の勤務時間に算入することができます。
就労選択支援員は、就労選択支援員養成研修の修了を要件とします。
ただし、経過措置として、令和9年度末までは、厚生労働大臣が定める研修を修了した者も就労選択支援員として認められます。(令和7年厚生労働省告示第89号による規定)
この研修には、障がい者の就労支援に関する基礎的知識やスキルを身につける内容が含まれます。該当する研修は、以下のいずれかです。
基礎的研修と同等以上の研修
※各研修の法的根拠については、厚生労働省告示や関連法令に基づきます。
就労選択支援員養成研修を受講するためには、以下の要件を満たす必要があります。
ただし、令和9年度末までは、基礎的研修または同等以上の研修を修了した者も、養成研修の受講が可能です。
「障がい者の就労支援分野の勤務実績」とは?
以下の職種における勤務経験を指します。
訓練・作業室
訓練または作業に支障がない広さを有し、必要な機械器具等を備えること
相談室
間仕切り等を設けること
洗面所・便所
利用者の特性に応じたものであること
多目的室その他運営に必要な設備
就労選択支援の報酬は、事業者が提供するサービスの内容や体制に応じて決定されるもので、基本報酬と加算・減算によって構成されます。
就労選択サービス費 1210単位
利用者に対して短期間の生産活動等を通じたアセスメントを実施し、適性や希望を整理する支援を行うことが前提となります。
加算は事業所の支援体制や利用者の状況に応じて報酬が増額される仕組みで、就労選択支援の加算には、次のようなものがあります。
減算は、事業所の運営体制や支援の適正性に問題がある場合に適用され、報酬が減額される仕組みです。就労選択支援の減算には、次のようなものがあります。
障害者総合支援法の改正により創設された就労選択支援は、個々の適性を踏まえた職場選択を支援する仕組みです。短期間の生産活動を通じたアセスメントや関係機関との連携を通じ、障がい者の就労課題を整理し、適切な支援を提供します。令和7年10月の施行後は、就労継続支援B型の利用要件にアセスメントの実施が含まれ、新たな基準のもとで運用されます。地域の状況に応じた対応も考慮され、幅広い支援体制が整備される予定です。